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Orca・cmux・Supersetを使い比べた並列エージェントツールの感想

はじめに

Claude CodeやCodexといったCLIベースのAIエージェントが当たり前になってきて、開発の進め方も少しずつ変わってきました。少し前までは1つのタスクを1つのエージェントに任せて、終わるのを待ってから次に取りかかる、という使い方が中心でした。ところが最近は、あるエージェントに実装を任せている間に別のエージェントで次のIssueへ着手する、といった並列運用が現実的になっています。

以前、別の記事でClaude Codeとgit worktreeでメイン環境を汚さずIssueを並行処理する方法を紹介しました。ただ、このやり方はworktreeを増やすほどVSCodeのウィンドウも増えていき、作成や切り替え、後片付けがだんだん煩雑になっていきます。それでも長く使ってきたエディタなので、VSCodeそのものは開発をする上で捨てがたい存在でした。

こうした課題を引き受けてくれるのが、ここ最近登場している「並列エージェントツール」です。今回はその中からOrca・cmux・Supersetの3つを実際に使い比べてみたので、それぞれの特徴と、用途別の選び方をまとめます。

先に結論を言ってしまうと、この3つは「並列エージェント」という同じ言葉でくくられがちですが、設計思想はかなり違います。どれが一番優れているかという話ではなく、自分の開発スタイルに合わせて選ぶのがよい、というのが使ってみての率直な感想です。

ちなみに私自身は、今はOrcaで開発するのが主流になりつつあります。Git操作をあらかたサポートしていてdiffもその場で確認でき、コミットやPRの作成までGUI上でAIに任せられる点が気に入っています。VSCodeは「必要なときだけ使う」という運用に変わってきました。

並列エージェントツールに求めるもの

比較の前に、私が並列エージェントツールへ求めるものを挙げてみます。この記事では、その観点で3つを見ていきます。

  • worktreeの分離と管理(エージェント同士の干渉を防ぐ)
  • 通知(エージェントが入力待ちになったと気づけるか)
  • レビュー体験(diffの確認、成果物の取り込みやすさ。動作確認がその場でできるか)
  • エージェントの自由度(Claude Code / Codex / OpenCodeなど任意のCLIエージェントを使えるか)
  • 手元の開発フローへの接続(エディタ・ブラウザ・Issueトラッカーとの連携)

3ツールの概要と使ってみた感想

Orca

Orca_モバイルエミュレータ画面

Orcaは、ADE(Agent Development Environment)を名乗るデスクトップアプリです。macOS・Windows・Linuxに対応し、ライセンスはMITです。並列worktreeを土台に、ターミナルの分割・埋め込みブラウザ・GitHubやLinearとの連携までをひとつのアプリに詰め込んでいて、たくさんのエージェントを抱えて開発するための司令塔のような立ち位置です。3つの中ではGitHubのスター数が一番多く、勢いを感じます。

動かせるエージェントはCodex・Claude Code・OpenCodeなどから選べて、自分のサブスクリプションでそのまま実行できます。worktreeごとにターミナルを分割でき、埋め込みブラウザにはUI要素をクリックしてHTMLやCSS、スクリーンショットをそのままプロンプトへ送れるDesign Modeがあります。SSH経由でリモートのworktreeを扱えたり、モバイルのコンパニオンアプリから外出先で通知を確認して追加の指示を出せたりと、間口が広いのも特徴です。各種操作をコマンドから自動化できるOrca CLIも用意されています。

Orca_ワークツリー作成画面

実際に使っていて便利なのは、ブラウザプレビューやモバイルエミュレータをアプリ内のタブとして開き、エージェントの成果物をその場で動かして確認できるところです。このブログの執筆自体もOrcaのworktree上で進めています。Git操作のGUIも一通りそろっていて、diffの確認からコミット、PRの作成までアプリ内で完結します。一方で、エージェントにはかなり広い権限を渡して動かしている感覚があり、自動化が進むぶん、どこまで任せるかは意識しておきたいと感じました。

cmux

cmuxターミナル複数起動画面

cmuxは、GhosttyをベースにしたmacOS向けのターミナルです。SwiftとAppKitによるネイティブアプリで、Electron製ではありません。ライセンスはGPLです。前の2つと違って、あくまで「ターミナル」であり、worktreeの管理やdiffのレビュー機能は持ちません。その代わり、ターミナルで完結する開発スタイルのまま、エージェントの並列運用に必要なところだけを強化する、という尖った作りになっています。

縦タブでワークスペースを並べつつ、エージェントが入力待ちになるとそのペインに青いリングが灯り、タブが光ります。どれが自分の入力を待っているのかがひと目で分かり、通知パネルもあります。スクリプタブルなAPIを持つ埋め込みブラウザや、SSHワークスペース、CLI・ソケットAPI経由の自動化にも対応します。Ghosttyの設定(~/.config/ghostty/config)をそのまま読み込めるので、普段のターミナル環境を持ち込めるのもうれしいところです。

使ってみると、まず起動が速く、1画面に複数のエージェントの動きを並べて見られる鳥瞰性が気持ちよかったです。余計なGUIがないぶん軽快で、ショートカットを駆使すればペインの切り替えも高速にこなせます。裏を返すと、その快適さを引き出すにはショートカットを覚える学習コストがそれなりにあり、GUIでのworktree管理やdiffレビューを求めると物足りなく感じるはずです。ふだんからターミナルで生活している人にこそ刺さるツールだと思います。

Superset

Superset作業画面

Supersetは、「AIエージェント時代のコードエディタ」を名乗るmacOSアプリです。特定のエージェントに縛られず、CLIエージェント全般に対応します。1タスクごとにworktree・専用ブランチ・ターミナル・環境がセットになった並列ワークスペースを土台に、エディタらしくdiffのレビューを中心に据えているのが特徴です。

superset_新規ワークスペース画面

サイドバーでは各エージェントの状態を監視でき、作業中インジケータや完了時のチャイム、Dockバッジで進み具合が分かります。組み込みのdiffビューアではコメントや編集、コミットまでその場で行え、ワークスペースごとにポートを検出してブラウザプレビューも出せます。リモートホストやCLI、SDK、MCPにも対応しており、成果物をレビューして取り込むまでの流れをアプリ内で最短にする設計です。

触ってみて、まずUIがよく整っているのが印象的でした。diffを起点に成果物を確認していく体験は快適です。一方で、Git操作まわりは一部がまだ開発中で、OrcaのようにPRの作成まではできません(執筆時点で、GUIで完結するのはコミットとpushまでです)。diffのレビューを最速にしたい、という一点に強いツールだと感じました。

3ツールは何が違うのか

3つを並べてみると、「並列エージェント」という同じ言葉でくくられていても、力を入れている軸はまるで違うと分かります。ざっくり一言で表すと、こうなります。

  • Orca … オーケストレーター。worktree・ブラウザ・Issueトラッカー・モバイルまで抱え込む、エージェント全体の管制塔
  • cmux … ターミナル。ターミナルで生活する人のための、通知と多重作業に強いGhostty
  • Superset … エディタ。worktreeの管理とdiffのレビューを軸に、成果物を取り込むまでを最短にする

見た目にも、この違いははっきり出ます。OrcaとSupersetは、worktree(エージェント)を左サイドバーの縦のリストとして並べ、メイン領域には選んだ1つをフォーカス表示します。一覧から切り替えて使うスタイルなので、エージェントが増えてもリストをスクロールして捌けますし、1つの作業に集中しやすいです。全体の状況は、各行の状態インジケータ(作業中か、入力待ちか)で把握します。

一方のcmuxは、複数のペインを1画面へタイル状に並べ、複数のエージェントの動きをまとめて眺めます。ターミナルらしいペイン分割の発想が、そのままエージェントの並べ方になっています。数が少ないうちは一望性が高い反面、増えると1枚あたりが窮屈になっていきます。

これは表面的なUIの好みというより、それぞれが何のアプリなのかの必然です。OrcaとSupersetはアプリシェルにサイドバーを持つ「アプリ」なので、ワークスペースの一覧管理がUIの土台になります。cmuxはターミナルエミュレータなので、その母国語であるペイン分割が土台になります。

Git操作まわりも三者三様です。OrcaとSupersetはGUIを備えていますが、PRの作成までアプリ内で完結できるのは執筆時点ではOrcaだけで、Supersetはコミットとpushまでです。cmuxはターミナルなので、Git操作はghなどのCLIで行うのが前提になります。

用途別の選び方

ここまで見てきたとおり、3つは優劣というより向き不向きで分かれます。どれが一番かではなく、自分の開発スタイルに当てはめて選ぶのがよいと思います。

複数のタスクを常時並列で回したい人、とくにIssueを起点に開発していて、外出先からも進捗を確認したり指示を足したりしたい人には、Orcaが向いています。worktreeの作成からPRの作成まで、開発の流れをまるごとアプリの中に置けます。

すでにターミナル中心で開発していて、いまのワークフローは変えたくない、でもエージェントの通知と多重作業だけは楽にしたい、という人にはcmuxが合います。ふだんのGhostty環境をそのまま持ち込めるので、乗り換えのコストがほとんどありません。

エージェントの成果物をとにかく速くレビューして取り込みたい、diffを軸に開発したい人にはSupersetが向いています。ただし、PRの作成までツール内で済ませたい場合は、執筆時点ではOrcaに分があります(SupersetはコミットとpushまででPR作成は未実装です)。

もちろん、1つに絞る必要はありません。ふだんの開発はOrcaに任せ、ターミナルでさっと済ませたい作業だけcmuxに切り替える、といった併用も十分ありだと思います。それぞれの得意分野を知っておくと、こうした使い分けもしやすくなります。

まとめ

並列エージェントツールとして、Orca・cmux・Supersetを使い比べてきました。最後に位置づけを一言ずつでおさらいします。

  • Orca … 全部入りのオーケストレーター。worktreeからPR作成、モバイルまでアプリ内で完結させたい人に
  • cmux … 軽快なターミナル。いまのターミナル中心のスタイルを崩さず、通知と多重作業を強化したい人に
  • Superset … diff起点のエディタ。成果物のレビューから取り込みまでを最速で終えたい人に

同じ「並列エージェント」でも、ツールによって体験は大きく変わります。まず1つ試すなら、自分がふだんどこで開発しているかを起点に選ぶのがおすすめです。アプリで管理したいのか、ターミナルなのか、エディタなのか。そこがはっきりすると、しっくりくるものが見つかるはずです。私はいまOrcaに落ち着いていますが、これは自分のスタイルに合っただけで、あなたの正解は違うかもしれません。気になったものから触ってみてください。

参考文献

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